園長だより10月号

今という時間を大切に!
~今日という日を一番若い日として~

園長 中村 洋志

食欲の秋、読書の秋、スポーツの秋を迎えました。さすがにこれまでの暑さも和らぎ、心なしか秋の訪れを感じる季節になりました。子どもたちにとっては、一年で最も過ごしやすい時期かもしれません。子どもたち一人一人の成長は嬉しいのですが、成長に伴いイヤイヤ期に入り、自我が芽生え、自己主張が以前より強くなり、その対応に苦労されている保護者も見受けられます。しかし、それも子どもの成長の過程、成長の証として受け止めながら見守っていただけたらと考えています。そんな時は一人だけで悩まずに保護者同士で情報交換したり、保育士等に気軽に相談したりしていただければと思います。

読書の秋だからという訳ではありませんが、先日、多くの著書・名言を遺されて、今なお感動を与えて続けおられる元ノートルダム清心学園理事長の渡辺和子さん(2016年12月30日89歳で没)の著書「置かれた場所で咲きなさい」を読み返し、改めて深い感動を覚えました。特に、「今日より若くなる日はありません。だから今日という日を私の一番若い日として輝いて生きていこう。これこそが私たちに与えられた唯一のチャンスです。」という文章です。当たり前といえば、ごく当たり前のことですが、ハッとさせられました。個人的なことですが、残り少ない人生なのに、「今という時間」、「今日という一日」を、ただ何となく生きているような気がして、これから先をただ何となく生きていくような気がして、少しあわてて自らの生き方を振り返ってみたのです。考えてみれば、テレビや小説の世界の中のように、華やかで感動的なドラマの中の出来事が、連日起こることはありませんし、私たちの日常は、ごく平凡な出来事の連続です。しかし、だからこそ、「今という時間」や「今日という一日」を少しでも充実させたいと考えてはいますが、なかなか思い通りにいかないのが現実で、反省の日々です。

詩人の三好達治さんは、「昨日はどこにもありません」というタイトルで「いいえ昨日はありません 今日を打つのは今日の時計 昨日の時計ではありません 今日を打つのは今日の時計 今日悲しいのは今日のこと 明日のことではありません 昨日のことではありません 昨日はどこにもありません 今日悲しいのは今日のこと」という詩です。現実的には、なかなか割り切って生活することは難しいことですが、人間は、昨日に戻ることもできませんし、明日に行くこともできません。だからこそ、今という時間、今日という一日を大切に生きていきたいのです。

私たちは、普段の生活の中では、今という時間や今日一日を意識することなく過ごしていることが多いのではないしょうか。目の前の子どもたちは、過ぎていく時の流れとは無関係かのように、今日も無邪気に過ごしています。時間は、誰の上にも平等に、確実に過ぎていきます。だからこそ、これから先、様々な出来事に遭遇していく子どもたち一人一人にとって、「今という時間 」、「今日という一日」が、意義あるものになることを祈ってやまないのです。ひょっとした瞬間にドラマの世界にも負けないような感動的な場面に出合うことがあるかも分かりません。子どもたちの笑顔は、私たち大人の心を癒してくれます。その子どもたちの一日が充実したものになりますように!