令和7年2月号(戦争・紛争のない平和な世界に!)

戦争・紛争のない平和な世界に!
~子どもたちの微笑みが消えないように~

園長 中村 洋志

あっという間に2月になりました。まだまだ厳しい寒さの残る毎日ですが、園内には相変わらずパワフルな子どもたちの明るい歓声が響き渡っており、活気に溢れています。子どもたちはエネルギーに溢れており、その成長振りには目を見張るものがあります。この子どもたちが巣立っていく世界が戦争や紛争のない穏やかで、平和な世界であることを心から願うばかりです。

昨年末に「日本被団協.・ノーベル平和賞受章」という嬉しいニュースが飛び込んできました。個人的には、被団協の中心メンバーの一人に広島時代に仲のよかった先輩・同僚がいましたので、喜びもひとしおでした。彼は、同じ学校で同僚として働いていた6年間は、被爆者であることを一言も発することもなく、いつも穏やかな笑顔で接してくれました。今改めて考えてみると、あの穏やかで優しい笑顔の中に「人類愛とか世界平和への希求」とかの思いを秘めていたのだろうと想像すると、なおさら尊敬の念が湧いてきます。彼は広島市内の学校長を退職した後、語り部として自らの被爆体験を広島だけでなく、大阪等でも子どもたちや若者に語り、今でも平和の尊さを伝え続けているとのことです。先日テレビ画面越しでしたが、受賞の喜びを語る紅潮した顔と張りのある彼の声を聞き、我がことのように感動しました。

人類は何度も戦争・紛争を繰り返してきました。残念なことに、豆まきその状況は現在も継続しています。イギリスのバートランド・ラッセルは、「戦争はどちらかが正しいかなんか分かりません。戦争が決めるのはどちらかが生き残るかだけです。」と言っています。アルバート・アインシュタインも、「平和は力では保たれません。平和はただ理解し合うことことによってのみ達成されるのだ。」と述べています。この他にも多くの先人が戦争や紛争の愚かしさを訴え続けていますが、我が国、世界の現状は、必ずしも人としての尊厳やかけがえのない命が守られ、誰もが安心・安全に暮らせる社会の構築という方向に進んでいません。しかし、だからと言って誰も声をあげない社会にはしたくありません。平和は理念だけでは実現しません。小さくとも一人一人の具体的な歩みが世界を変えていきます。今回の受賞はそのことを教えてくれたように思います。

それぞれの個性を持つ子どもたちの集まりである保育園での生活は、我が家のようなわがままが通らない世界です。特に、遊びの場面では、人気のオモチャや絵本等は複数での取り合いが始まり、小さなトラブル発生することが多々あります。実は、そんな場面は、私たちにとっては、絶好の指導の場でもあります。保育士たちはその状況に遭遇した場合、当事者同士で話し合わせ、粘り強く「貸して」「ありがとう」「ごめんなさい」等の言葉が出てくるのを待ちます。一朝一夕という訳にはいきませんが、やがて子どもたちには笑顔が生まれ、何事もなかったかのように仲良く遊びだします。マザー・テレサは、「平和は微笑みから始まる」と言いました。平和は遠い世界にあるのではなく、ごく身近な第一歩の中にあります。ここがすべての原点のようにも思えることがあります。子どもたちの屈託のない笑顔に接しながら、この笑顔が消えるような世の中が到来することがないことを祈るばかりです。