園長だより 8月号
ほんの小さなきっかけで! ~「あなた、歌が上手ね」の一言が~
県内でも新型コロナウイルス感染症のクラスター=集団感染が発生したこともあり、まだまだ予断を許さない状況が続いています。「新しい生活」に基づいた取組を進めるしかないのでしょうか。ただ、目の前の子どもたちは、明るい雰囲気の中で、個性的かつエネルギッシュに過ごしています。この子どもたちが伸びやかに過ごせる環境づくりが求められています。天文館てんてん保育園と騎射場れいわ保育園としましては、その役割の一端を果たせるよう職員一丸となって取組を進めたいと考えています。
10年近く前に,作詞・作曲家・歌手として著名な「小椋 佳」さんとお会いしたことがあります。小椋さんは,毎年の「学芸会」で,「お前は歌わんでよろしい」と,声を出さないですむ指揮者をさせられることが多かったということです。小学校時代から,無意識に「間」を外したり,「音の強弱」をつけたりする歌い方が,先生方からは疎ましく思われていたようだと述懐されています。
そんな彼を唯一褒めてくださったのは,別のクラスの担任をされていた稲葉という先生だったそうです。担任の先生が休まれていた時に,たまたま彼の声を聴いた先生が,「あなた,歌が上手ね。」と褒めてくださったのです。当時,勉強にも運動にも自信がなく過ごしていた小椋少年にとっては,実に強烈な一言だったということで,今でもそのことをはっきりと覚えていると話してくださいました。作詞の面では,高校時代に出会った斉藤という先生から大きな影響を受けたということですが,ほんの小さなきっかけで,人生が大きく変わることがあります。
私たちが何気なく発した言葉が,子どもに大きな影響を与えることがあります。子どもはいくら小さくても、一人の人間として生きています。決して、子どもは,大人の小型版として生きているわけではありません。一人一人の子どもたちに真正面から向き合いたいと改めて考えています。私たち大人にできることは,あくまでも、何かを始めるための「きっかけづくり」です。私たち職員も、その一人になれればと考えています。保護者の方々との出会いも含め、一人一人のお子さんとの出会いを大切にし,その出会いをより意味のあるものにしていきたいと考えています。
ある保育士が、「私たちのことは、ずっとは覚えていないんだよね。」とポツリと言ったのを聞いたことがあります。今、目の前にいる子どもたちは、比較的年齢の低いお子さんですので、保育園で過ごしたことをずっと覚えていることはないと思いますし、そのことを期待しているわけでもありません。長い人生の中で、これからも数え切れない方々との出会いがあり、多くの経験を通す中で、様々な影響を受けていくことになると思います。しかし、天文館てんてん保育園と騎射場れいわ保育園で一緒に過ごしたことが、将来、それぞれのお子さんの人生を支える一助になっていくとすれば、私たちの仕事はそれだけで十分なのです。
園長 中村洋志