園長だより 6月号
人生にも四季がある!~人間どうしの相互関係でつながれている~
いつの間にか、初夏の風の吹く季節になりました。日本は、四季はっきりしていることでそれぞれの季節に応じた美しい風景があります。子どもたちの表情にも四季と同じように様々な表情があり、私たちの心を和ませてくれます。今は、新型コロナウイルス感染症が収束し、子どもたちが伸び伸びと自然を満喫できる日が来ることを祈るばかりです。
作家山本周五郎氏(1903~1967)のあるエッセーに、次のような文章を残しています。「どんなに産業がマンモス化し、ボタン作業が発達しても、人間の力がまったく不要になることはないだろう。社会はつねにあなたがたを求めているのだ。(中略)時に離合があり対立があるかもしれないが、あなたはまぎれもなく社会の一員であり、社会はあなたを求めているのです。(中略)人生にも四季があり、好況と不況とはつねについてまわる。(中略)つまづいて転んだままのびている人を見ると、見ている者までが脱力感におそわれる。これに反して、転んでも転んでも起きあがってゆく人を見ると、こちらまで勇気づけられる。これはどんな状態になっても人間は一人ではなく、いつも人間どうしの相互関係でつながれている、ということであろう。子供っぽいことをいうようであるが、人間感情の本質的な面に触れようとすれば、哲学的であるより、子供っぽいすなおさをおそれてはなるまい。」(「人生の冬・自然の冬」より)
彼は、庶民派の作家として有名ですが、エッセーのまとめとして、「子供っぽいすなおさの大切さ」を書いたことに興味深いものがあります。子どもたちは、どんな時代にもそれを受け入れ、それを乗り越えていくバイタリティーを持っています。時代にも好不況があり、人生にも山や谷があります。しかし、子どもたちには内在する「明るさ」・「たくましさ」があります。そして、それを支えている多くの「仲間」がいます。それは、子ども同士であったり,親やその周囲の大人であったりするかもしれませんが、誰か支えてくれる人がいるという安心感が伸びやかな成長を促す一番の原動力になります。つまり、「人間どうしの相互関係でつながれている」という実感を、子どもたちに持たせることが肝要なのだと思います。それは一朝一夕にできることではなく、「積み上げていく」根気のいることでもあります。
子どもたちは、季節を問わず明るく、元気に過ごしています。集団での生活になりますので、小さなトラブルが起こることもありますが、保育園は、そういうかかわりを通して、信頼し合える「仲間」をつくる出会いの場であり、「精神的な安心感」を培っていく場でもあると考えています。これから子どもたちが巣立っていく世の中は、決して平坦な道ばかりではなく,まさしく四季の移り変わりのように暑さや寒さがある変化の激しい道に遭遇することもあると思いますが、一人の人間としてたくましく成長してほしいと願っています。
園長 中村洋志