園長だより 2022年4月号

誰も上限を決められない~子どもたちは可能性のかたまり~

日毎に風が柔らかくなり、何となく心もウキウキする爽やかな季節になりました。4月は、巣立ちの季節であり、希望を与えてくれる節目の月でもあります。時折見せる子どもたちの明るい笑顔は未来への希望です。どの子も輝いて見えます。

今年の「歌会始」のお題は「窓」でしたが、香川県小豆島町の藤井哲夫さんの句が今でも印象に残っています。藤井哲夫さんは、古希の時に出席した同窓会に多くの友人たちが集まれたことへの喜びを、「出来た子もそれなりの子も働きて働きぬいて今日同窓会」と詠みました。私自身も様々な機会に、幾度となく教え子たちと会うことがあり、その度に彼らの成長振りに驚かされることが多く、共感しました。自分自身の体験・実感とも重なり非常に深い感銘を受けたのです。私は、「子どもたちは可能性のかたまりであり、どんなに熱心な教師でも、いつも一番身近にいる親でも「その子の可能性の上限を決めることはできない」と考えています。それは、あの有名なヘレン・ケラーの人生を見ればよく分かります。彼女自身の努力はもちろんですが、彼女の能力の上限を決めずに、可能性を信じて見守り続けた人が身近にいたからこそ、内側にある豊かな才能を開花させることができたのだと思います。

私は、ここ数年間で何回かの入院・手術を経験しました。不思議なことに、その都度、初任校のさつま町をはじめ、鹿児島市、広島市の教え子たちの電話や手紙、LINE等で励まされ、勇気づけられ、改めてこれまでの出会いに感謝しています。人は、肩書きがある間は、周りに集まったり、付いてきてくれたりします。しかし、それが無くなると蜘蛛の子を散らすように去って行く人もいますが、それも現実です。ただ、本当に支え合った人は今でも程よい距離感で支えてくれます。教え子にはそんな気遣いが要りません。現在の肩書きや立場など関係なく、集まれば、その当時のように、何の屈託も無く、ただ人として語り合い、付き合ってくれます。昨年の秋、新型コロナウイルス感染症が下火になった際、ワクチン接種等の感染症対策をした上で、広島時代の教え子が二人(広島有数の病院の理事長・院長、大阪で建設事務所経営兼大学講師)が、病気のことを心配して訪ねてきてくれました。その際、「小学校から大学までを振り返ってやはりあの当時が一番充実していたし、一番影響を受けた。」と言ってくれました。お世辞だとは分かっていますが、有り難い言葉でした。久しぶりの再会でしたが、出会った当時のままの笑顔で語り合いました。その後、「またの再会を楽しみにしています。」という二人からメールがあリましたが、当時は想像も付かないぐらいに素敵に成長した姿に圧倒されるとともに、改めて、「子どもたちは可能性のかたまり」だと実感させられています。

才能は、学校の成績だけではかることはできません。また、その才能がいつ開花するかも誰にも分かりません。だから人間は面白いのです。目の前の子どもたちを見ていると、どんな大人に成長していくのだろうと楽しみで仕方がありません。ただ、それには、その子の成長を心から信じ続けてくれる存在が必要です。そんな人が一人でもいれば、子ども伸び伸びと逞しく成長していくことができます。私自身の拙い経験ではありますが、そのことを信じています。

 園長 中村 洋志