園長だより 2022年5月号

多様な考え方のできる子に!~様々な解決方法があることを認める~

木々の若葉が目に映える清々しい季節になりました。この時期は、何となく希望に満ち溢れており、子どもたちの「笑顔」が一番似合う季節でもあります。健やかな成長に期待しています。子どもたちは、一人一人顔が違うように、同じように育てたつもりでも、考え方や行動等に違いが見られます。その子どもに内在する様々な要因や環境等に左右されますので、当然といえば当然なのですが、ややもすると、これまで我が国では、人と違うことがあまり歓迎されない風潮があったことも事実です。画一的でなく、その子なりの「よさ」を認め、伸ばすことができる社会になればと念じています。

私は、以前、十数年間にわたり,「算数の教科書」算数の編集及び執筆を担当していたことがあります。「教師用指導書」も執筆していましたが、その中で、わり算の筆算方法について書いたことがあります。私たち日本人は、明治初期に導入された下記の方法(日本式)で画一的にわり算のやり方をお教えてもらってきました。しかし、諸外国には様々な方法があり、それぞれに意味があります。日本にも、いくつかの方法が伝わってきたのですが、右のような方法が定着しました。実は、「日本式」といっても、明治初期に欧米から伝わってきた幾つかの方法の中から、一つを選択し、定着を図ったものだと言われています。ただ機械的に教えるのではなく、子どもたちに工夫させると、様々な方法を見つけ出してくれました。教科書を超える方法はないか。」と質問したところ、実に多様な考え方(12通り)を見つけてくれ、自分なりの根拠も説明してくれました。その中には、右のように、現在、カナダやドイツ、インド、イギリスなどで教えている方法に近いものまで考え出した子もいました。ある子が考えた方法は、仮商を少なめに立てて修正していく方法ですので、割り算の苦手な子でも正しい商を導くことができます。今でも、当時の記録を持っていますが、子どもたちの多様で、柔軟な思考に感心するとともに、子どもたちから学ぶことが多いことに気づかされます。

この他にも、教科書の歴史を変えるような発見をした子どももいました。そんな発見をする子は、決して算数・数学の得意な子だけではありません。むしろ苦手だからこそ、自分なりの工夫をし、四苦八苦しながら、「自分にとって、一番分かりやすい、最前の方法」を考え出す子どももいるのです。自分で見つけた方法は、確実に自分の身に付き、自信となって態度にも表れるものです。
園長 中村 洋志