園長だより 3月号

古賀稔彦さんの生き方に学ぶ! ~大切にしたい「優しさは強さ」~

 園長 中村 洋志

厳しい寒さの時期を過ぎ、春の息吹を感じる季節になりました。この一年を振り返ると、子どもたちは、それぞれ豊かな個性を発揮しながら大きく成長したと実感しています。保護者の方々にはこの一年間本当にお世話になりました。職員一同心から感謝いたします。4月から転・退園されるお子さんもいらっしゃいますが、継続されるお子さんも含めさらなる成長に期待したいと思います。

さて、「平成の三四郎」と呼ばれ、代名詞の背負い投げを武器に1992年のバルセロナオリンピックで金メダル、19996年のアトランタオリンピックで銀メダルと活躍された柔道家、故古賀稔彦さん(2021年3月24日逝去)の言葉が改めて注目されています。彼は、息子2人と娘さん1人の3人のお子さんがおられますが、彼らに常に伝えていたのは「強くなるより、優しくなれ」という教えだと聞きました。柔道と優しさは結びつかないような気もしますが、引退後に開いた道場の門下生にもその教えを貫いたとのことです。ある方が、「優しさには、その場を瞬時に分析できる判断力がある。優しさには、自分以外を注視できる集中力がある。優しさには、先を見る力がある。優しさには、自己犠牲力も時にはある。優しさには、相手が何を考えて何を願うか読む力がある。許す包容力もある。ただ従う、嫌われたくないから服従する、それは優しさではない。自己を守りたいだけだ。」と書いてあり、妙に納得したのを覚えています。

ややもすると、優しさは甘やかしとか弱さと勘違いされがちですが、それとは全く質が異なります。「優」は、「にんべん(人)」と「憂」で成り立っています。私は、「人の憂いが分かること」と解釈しています。精神的に強くないと他人は優しくできません。インドの独立の象徴であるガンジーも、「本当の強さは人を許せることだ。」と言っています。50年近くも前の話ですが、私の記憶が確かであれば、児童文学者の新美南吉の作品の中で、「優しさはすべてに勝つ。」という言葉に出合ったことがあります。教員になったばかりでしたので、深く脳裏に刻まれ、子どもたちにも様々な場面で伝えてきました。息子の結婚式でも、はなむけの言葉として贈りました。どういう思いで受け止めたかは分かりませんが、改めて古賀稔彦氏の強さは「本物の強さ」だったのだと確信しています。

先行き不透明な時代を生き抜いていく子どもたちが、健やかに生きていける世の中になればと祈るばかりですが、「優しくて強い子」、「強くて優しい子」に育ってくれればと願っています。一年間お世話になりましたが、職員一同、出会ったすべてのお子さんの健やかな成長をお祈りいたします。