園長だより9月号

本当のプロの言葉!
何気ないひと言で救われる場合がある~

園長 中村 洋志

温暖化の影響か、9月の声を聞いても厳しい残暑の続く毎日です。そんな中にも季節の変わり目を感じる瞬間もあり、確実に時の流れを実感します。子どもたちは真夏とは違う雲の様子や木々の葉の色などの小さな変化にも敏感に反応します。最近は、4月当初に比べると、行動もより活発になり、言葉数も更に増え、表情も一段と豊かになったような気がして嬉しく感じます。一人一人様子を見ていると、これから先の更なる成長を期待せずにはおられません。

8月の職員研修で、職員に次のような話をしました。私自身もそうですが、病院に通う多くの患者は、誰しも不安な気持ちを抱えながら静かに順番を待っており、ドキドキしながら診察や治療を受けます。何気ないひと言の大切さについて考えてもらいたいとの思いから、子どもたちや保護者等に対応する際の参考になればと考え、自らの患者としての体験を職員に紹介しました。

【ある看護師の言葉に学ぶ!】

先月、足の甲に痛みがあり、なかなか原因がはっきりしないため紹介された複数の病院を訪れた。体調の関係で毎月複数の病院にお世話になり、場合によっては採血をすることも多い。どの病院も基本的には笑顔で対応してくれ親切ではあるが、採血は得手不得手があり、時には4~5回も注射針を刺し直すことすらあることから、どの看護師に当たるかドキドキすることがある。初めて訪れたある病院で採血をすることになった。いつも血管が細いことを指摘されるので、「血管が細いと言われています。」と告げたら、殆どの場合はあまいいい顔はされないのであるが、彼女は、「まあ、やり甲斐があります。」と答えたのである。「頑張りますね。」と言って、採血を始めた。「少し痛いですよ。」と言いつつ針を刺したのであるが、全く痛くもなく、今までで一番と思えるほどスムーズに採血できた。「まあ、やり甲斐があります。」と答えた時点で、少々の痛みは我慢できると思ったが、いつ刺したかも分からないぐらいだった。今は、ひょっとしたらあのひと言が痛さを感じさせなかったのかもと、考えている。人は、たったひと言で人は救われる場合がある。その逆もあることにも気付く必要がある。

まさしくプロの一言でした。たぶん看護師のプロとして普段から多くお月見の患者さん方と接する中で身につけたスキルの一つだとは思いますが、根底にはその方自身の人間性があるのかなと感じることでした。何か得をしたように思えた一日であったと同時に、自分自身の日頃の言動を振り返りながら、今は反省させられた一日でもあったような気がしています。

私たち職員の発する言葉は、子どもたちが大人のように多くの言葉を持たないからこそ重たいと思っています。何気ない言葉は人を勇気づけたり、励ましてくれたりする一方、人を傷つけたり、やる気を失わせたりすることもあるからです。時に、保育士は保育に関するプロです。自らの言動に誇りと自覚を持って子どもたちの前に立つことができれば、子どもたちもそれに応えてくれる存在だと信じています。