園長だより12月号

子どもたちは繰返しを楽しむ!
~「親近性」と「新奇性」~

園長 中村洋志

あっという間に令和6年の年末を迎えました。保護者の方々には今年一年間本当にお世話になりました。今年は、日本のみならず世界各地で予想だにしない自然災害や戦争など悲しい報道もあった一方、「日本被団協」のノーベル平和賞受賞、パリオリンピック・パラリンピックや野球のワールドシリーズでの日本選手の活躍など明るいニュースもあり、悲喜こもごもの一年だったような気がします。来年こそは、老若男女問わず全ての方々が明るい笑顔で暮らせるような世界になることを祈るばかりです。

この時期になるといつも思い出す詩(谷川俊太郎)があります。その中の「繰り返すものはどうしていつまでも美しいのだろう 朝の光もあなたの微笑みも」という一節です。子どもたちの同じ遊具で繰り返し遊んでいる姿を見て、「あんな単純な遊びで何故飽きないのだろう」と考えたり、同じ絵本やビデオ番組を次に出てくる台詞を覚えるくらい何回も何回も繰り返し見て、本当に楽しそうに笑っている子どもたちの姿を不思議に思うことがあります。子どもたちは、同じことを繰り返すことよって様々なことを学んでいます。試行錯誤をしながら繰り返す中で、様々な工夫が生まれ、思考力を発達させていくのです。実は、この反復動作は、単なる機械的な繰り返しではありません。子どもたちにとっては、この単純そうに見える繰り返しが面白いし、そのことによって体を通して学んでいくのです。例えば、新聞紙等の紙を使って、それを破ったり、紙飛行機などを作ったりして楽しんでいる姿をよく見かけます。大人から見れば、毎日同じことをして何が楽しいのかよく理解できないこともありますが、子どもたちにとっては、紙の大きさが異なったり、紙の硬さが違ったりして、昨日と違う感覚が得られるのです。

また、繰り返し同じ絵本を読むことも、読む度に異なる問題意識で接し、異なる感想を持つのかもしれません。コマーシャルの台詞を覚えるのも、自分の過去の記憶と合致していれば成功感を味わい、違っていれば、次は合致させようとして懸命に覚えるのです。表面的には同じ行動に見えても、子どもたちの内面は、同じことの繰り返しではないかもしれません。最近の脳科学では、テレビのCMに代表されるように、同じ内容を繰り返すことによって親しみを増す「親近性」と,単純に同じことを繰り返すだけでは飽きられてしまうため、それを防ぐために、随時、適度な変化としての新しい要素を加えていく「新奇性」とが注目されているとのことです。大人から見れば、飽きずに同じことを繰り返し、楽しむことができるのだろうと感じるかも分かりませんが、子どもたちにとっては、大きな意味があることがよくあります。

ただ、子どもたちは、何となく同じ遊びを繰り返したり、同じ絵本やビデオ等を繰り返し見たがったりしているのではありません。子どもの発達段階、知識、経験などにふさわしい、自分に新鮮さを与えてくれる内容のものを繰り返し見るのです。子どもたちの様子を見ていると、一つ一つの行動や活動が愛おしくて、面白くてたまりません。だから、子どもたちの笑顔は、いつも眩しいほど輝いていますし、毎日見ていても飽きがくることはないのです。私たちも、子どもたちの笑顔に負けないようにしたいと思います。来年こそは、子どもたちやご家族の方々にとりまして明るく元気に過ごせる穏やかな年になることを心から祈念いたします。