園長だより 11月号
完璧な親になれなくても!~子どもにできないことがあるのは当たり前~
園長 中村 洋志
秋の深まりを感じる季節になりました。子どもたちも四季折々の変化を感じながら成長していきます。子どもたちの明るく元気な姿に接しながら、子どもたちにとって、文字通り実りの秋になればと念じながら取組を進めております。保護者の方々も子どもたちの健やかな成長を願っているのではないでしょうか。
この時期になると、長い間幼稚園や保育園の子どもたちと関わってこられた「柴田愛子」さんの著書「お母さん、それは悩むことではありません」の中の一節を思い出します。それは、「子育ては、悩みごとの連続かもしれません。(中略)責任感の強い人ほど迷ってしまうのもしかたありません。子育ての悩みには、いくつかのパターンがあるみたいです。まず、『お母さんが子どもの発達を知らないために生じる悩み』。どうしてこんなことがまだできないの?って不安になるんですね。もう一つは、ちょっと辛口になりますが、『お母さんが自分を棚に上げて、子どもだけを立派に育てようとするために生じる悩み』。子どもを回り道させずに立派に育てようっと力むから,悩むわけです。作為的にいじくり回したところで、いい結果が出るわけではありません。それから,『子育て環境をめぐる悩み』。子育て支援の状況でお母さんが孤立してしまったり、周りの人と意見が合わなかったり、いろいろな出来事が次々に起こります。(中略)ともかく、子育ての悩みのほとんどは、子どもに自ら育つ力があるんだと信じることができれば、ぐっと楽になります。『完璧なお母さんになれない』って?それでいいじゃないですか。だって完璧な子どもなんていないんですもの。子どもに食べ物を与え、温かく眠れる寝床を準備して、排便をチェックし、余計な心配をかけなければ、子どもは命をつないで成長していきます。子育ての基本って、ただそれだけなんです。」という文章です。
私自身も、これまでに多くの子どもたち、保護者や保育士及び教職員、地域の方々などとの出会いがあり、その中から多くのことを学んできました。また、県内外各地で、いろいろな方々にお話をする機会をいただき、そこでも新たな出会い、学びの機会をいただいています。子育て等に関する相談を受ける場合もあります。真剣に考えているから、悩みが生じ、あれこれ考えてしまいます。しかし、そのことは決して無駄なことではありません。
先日、ある学校に講演に伺った際にその学校の校長さん(50歳代)から、思いがけない相談を受けました。「私は、なかなか子どもに恵まれなくて、あきらめていた時にやっと子どもを授かりました。子どもっていいですよね。でも、この子が成人する前に退職なんです。私も、立場上、子育てはこうあるべきだと、保護者にも話してきたのですが、我が子が生まれると、どうしても我が子のことだけが気になり、冷静になろうと思っても、客観的に見ることができません。子育てって難しいですね。」という内容の話でした。「『子どもにはできないことがあるのは当たり前』という余裕があれば、客観的に子どもと接することができます。子どもにとって、完璧な親はいません。でも、子どもたちは,『少しでもいい親になろうと努力する親』を尊敬します。『子育ては、親育ち』と言われる所以だからです。子育ては、自分以外の人の支援を受けて成り立つからです。」というような話をして別れましたが、校長さんでも、我が子のことは、他の親と同じように悩んでいます。当たり前のことだからです。少しでも、できるようになったこと・分かるようになったことを認め、励ましていく人がいれば、子どもたちは必ず伸びていきます。